糖尿病
現在、我が国では推計1000万人の糖尿病患者さんがいます。さらに糖尿病予備軍まで含めると、2000万人に達すると言われ、これは成人の4人に1人の割合になります。
コロナ禍でTV観戦や、テレワークなどによる座業が糖尿病のリスクになりうるとも考えられます。
また近年の研究から、高齢者では、認知症やうつ病、サルコペニアなどにもなりやすいと言われており、日頃から注意が必要です。
糖尿病の診断について
糖尿病とは、慢性的に血糖値が高くなる病気です。
血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度を指します。
糖尿病では膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンが十分に働かないため、血液中のブドウ糖が増えすぎて、慢性的に血糖値が高くなります。
慢性的な高血糖を判断するには、血液検査で直接高血糖を調べるだけでなく、以下に述べる「Hb A1c(ヘモグロビンエーワンシー)」という、過去1~2ヶ月間の高血糖を調べることができる指標や、家族歴なども加味して診断されます。健診などで、「糖尿病の可能性」を指摘された場合には、糖負荷試験(75gOGTT)を行うこともあります。
糖尿病は初期では、無症状なので健康診断などで、高血糖を指摘されるまで気が付かないこともあります。
しかし血糖値が高い状態が続くと、全身の血管や神経が傷つけられすので、放置するといわゆる糖尿病性網膜症や、糖尿病性腎症などのような合併症も引き起こされますし、最終的には脳卒中や心臓発作のような大血管障害に至り、命に関わることもあり得ます。
どんな種類があるか
糖尿病は大きく、インスリンが絶対的に不足している「1型糖尿病」と、過食や運動不足によりインスリンが相対的に不足する「」2型糖尿病」、さらに薬剤や感染症などによる「その他の糖尿病」に分類されるが、大半は「2型糖尿病」です。
合併症
糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性足病変、糖尿病性歯周病などがあります。
いずれも早期発見、早期治療すれば防ぐことができる合併症です。
内科医と眼科医、腎臓専門医、皮膚科、整形外科などと、糖尿病連携手帳やお薬手帳を活用することで、より良い治療を受けることができます。
糖尿病かかりつけ医とは違う医療機関を受診する場合、診療情報提供書をもらいましょう。
どうやって治療するか
治療としては、血糖値を適正に保つこと「血糖コントロール」をしていくことになります。
その指標として、「Hb A1c(ヘモグロビンエーワンシー)」が利用されています。これは過去1~2ヶ月間の平均血糖値を表すとされており、外来で「今日、食事をしてきちゃたわ」とか、「昨日飲みすぎた」などには関係なく、患者さんの過去の血糖値を反映しており、治療がうまくいっているかどうかの判断材料になります。
日本糖尿病学会のガイドラインでは、HbA1cを7.0%未満にすることを推奨しております。しかし、患者さんの状況(年齢や、合併症の有無など)によって、目標値は変わるため、かかりつけ医によく相談することが必要です。
いずれにしても、糖尿病を悪化させず合併症も引き起こさないためには、早期から厳格な血糖コントロールに取り組むことが必要です。
また糖尿病と同じ「三大成人病」である、「高血圧症」「高脂血症」にもならないようにすることが大事です。
治療としては「食事療法」「運動療法」「薬物療法」が柱となります。
食事療法
食事コントロールについては、管理栄養士などによる栄養指導などを活用し、総エネルギー摂取量などを決めていきます。
実際には目標体重だけでなく、年齢や日常生活の活動性によって個々の患者さんごとに設定されることになります。
運動療法
運動についても、「週3日以上で1日50分以上の有酸素運動(中等度~強度)」を勧められていますが、あくまでも2型糖尿病についてであることと、日々の生活の中で患者さんご自身で「これって強度どれくらい?」と考えることも難しいと思いますので、こちらもかかりつけ医にご相談される方がいいでしょう。
私どもでは「うっすら汗ばむくらいの運動を1時間位」を目安にお薦めしておりますが、こちらも「高齢で膝が痛む」「感染症が怖くて外出できない」など、色々なケースがありますので、あくまで目安ということです。
薬物治療
現在、我が国で使用可能な糖尿病に対する経口内服薬は大きく7種類あります。
- 膵臓からのインスリン分泌促進剤であるSU(スルホニルウレア)薬
- 即効型インスリン分泌促進剤であるグリニド薬
- 血糖値依存性にインスリン分泌を促進するDPP-4阻害薬
- 末梢でのインスリン抵抗改善薬であるビグアナイド薬
- 末梢でのインスリン感受性を改善するチアゾリジン薬
- 腸管でのブドウ糖吸収遅延により食後血糖を改善するαグルコシダーゼ阻害薬
- 尿糖排出を促進し、腎臓でのブドウ糖再吸収を抑制するSGLT-2阻害薬があります。
があります。
また、それら以外の注射薬として、血糖値依存性にインスリン分泌を促進するGLP-1阻害薬やインスリンがあります。
それぞれの薬理作用や患者さんの背景を考えて、薬剤が選択されます。
単剤、少量からスタートして、HbA1cの値をみながら、血糖コントロールがうまくいっているかどうか判断することになります。